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追うぞ! 千夜千冊125夜 『嵐が丘』 エミリー・ブロンテ
高校時代には読まなかった。どんな物語なのか知らない。

松岡正剛さんは読んだそうだ。こんな想い出が書いてある。
「ぼくがこれを読んだのは高校時代で、それも憧れていた岩崎文江という小さくて美しい女生徒に、「えっ、『嵐が丘』を読んでいないの?」と言われてのこと、2週間くらいかかってぶっつづけに夜をつぶして読んだ。ほとんど息が詰まるおもいがしたのは、エミリー・ブロンテの用意した構造のせいばかりではない。岩崎文江嬢がいったいキャサリンなのか、ぼくをヒースクリフと言っているのか、冒頭からそういうよこしまな見立てで読んだからだった。しかし、物語がすすむにつれ、そんな気分は吹き飛んだ。あまりに構造が複雑で、人間の不吉な宿命と苛烈な意志のようなものが鋼線のごとく錯綜していたからである。その後、『嵐が丘』についてどんな友人も話題にしないので訝っていた。男が読む小説ではないのだろうか? それが唐十郎に会って、焦眉がひらいた。唐十郎は『嵐が丘』の熱烈な愛読者だったばかりか、彼の芝居の根底にはいつもヒースクリフとキャサリンが配してあった」

このような話らしい。

1801年頃の話。青年ロックウッドは人里離れた田舎にある「スラッシュクロス」と呼ばれる屋敷を借りて移り住むことにした。「スラッシュクロス」唯一の近隣であり大家の住む「嵐が丘」を訪れて館の主人ヒースクリフや一緒に暮らす若い婦人キャサリン・リントンらと面会する。 ヒースクリフは無愛想でキャサリン・リントンは彼の妻でもなさそうだった。この住人達の関係は冷え切っており客前でも平気でののしり合っている。彼らに興味を抱いたロックウッドは事の全貌を知る古女中エレン(ネリー)に事情を尋ねヒースクリフと館にまつわる憎愛と復讐の物語を聞かされることとなる。

昔、この「嵐が丘」では旧主人のアーンショー、アーンショー夫人とその子供であるヒンドリーとキャサリンが住んでいた。 ある日、主人は外出先で身寄りのない男児を哀れに思い、家に連れて帰ってきた。 主人は彼をヒースクリフと名づけ自分の子供以上に可愛がり、ヒースクリフはキャサリンと仲良くなった。しかしアーンショーが亡くなり館の主人がヒンドリーになると、今までヒースクリフを良く思っていなかったヒンドリーは、ヒースクリフを下働きにしてしまう。それでもヒースクリフとキャサリンは仲が良く、お互いに恋心を抱くようになっていた。そんなある日、二人は「スラッシュクロス」の住人と出会うことになる。当時、「スラッシュクロス」には上流階級の主人リントンとリントン夫人、その子供のエドガーとイザベラが住んでいた。彼らの優雅な生活に衝撃を受けたキャサリンは上流階級に憧れを持ち、ヒースクリフを必要としながらも自分を下げることはできないとエドガーの求婚を受けてしまう。 ショックを受けたヒースクリフは姿を消す。

やがてヒースクリフは裕福な紳士になって戻ってくるが、それは自分を下働きにしたヒンドリー、キャサリンを奪ったエドガー、そして自分を捨てたキャサリンへ復讐を果たすためであった。まずは、「嵐が丘」のヒンドリー。彼は妻を早くに亡くし、その悲しみから息子ヘアトンと共に荒れた生活を送っていた。そこへ賭博の申し出をして、「嵐が丘」と財産をそっくり奪い取ってしまった。その次は、エドガーと結婚したキャサリンの住む「スラッシュクロス」に訪れ、一緒に住んでいたエドガーの妹イザベラを言葉巧みに誘惑し、一緒に駆け落ちさせて結婚。だがそこに愛はなく、あるのは冷たい言葉と虐待だけだった。耐えきれなくなったイザベラは「嵐が丘」を出て、一人でリントンを出産した。その合間にもエドガーに内緒でキャサリンにたびたび会い愛を語っていたが、そのせいでキャサリンは発狂してしまう。二人の間で板挟みになったキャサリンは苦しみついには亡くなってしまう。その時お腹にいたキャサリン・リントンは助かり、キャサリンの忘れ形見になった。

こうして復讐を終えたヒースクリフだったが、その憎悪はとどまるところを知らなかった。 復讐はヒンドリーの息子であるヘアトンとエドガーの娘、キャサリン・リントンにも及んだ。 「嵐が丘」ではヒースクリフとヒンドリー、ヘアトンが住んでいたが、ヒンドリーは亡くなり、ヒースクリフはヘアトンと二人で暮らすようになった。ヘアトンは元の素質が良く、本来は頭も顔も悪くなかったのだが、ヒースクリフはあえて野良仕事をさせ悪態を覚えさせた。そうしてヒンドリーの嫌うような教養のない人間に育てることに成功した。イザベラが亡くなり、ヒースクリフの息子であるリントンはイザベラの遺言によりエドガーに引き取られるはずだったが、ヒースクリフは無理やり引き取ってしまった。しかしリントンは病弱で気弱、素質が悪いと見限ったヒースクリフは、彼を愛することはなかった。「スラッシュクロス」ではエドガーとキャサリン・リントンが仲良く静かに暮らしていた。ある日、キャサリン・リントンは「嵐が丘」に迷い込み住人達と出会う。過去の出来事を全く知らない彼女はヒースクリフ達に興味を持った。特に前に少しだけあったリントンがいとこだとわかると、友達ができたと嬉しがる。そこに目をつけたヒースクリフは、リントンとキャサリン・リントンを結婚させ、「スラッシュクロス」とエドガーの財産を自分のものにしようと企む。この頃エドガーは衰弱しており亡くなれば財産はリントンのものなのだが、リントンは病弱で、20まで生きられないのではないかと言われていたのだ。 どちらが先に亡くなるか分からないのだから結婚させてしまおうと考えヒースクリフはリントンに入れ知恵をする。ヒースクリフの策により、キャサリン・リントンはリントンに恋したと錯覚しエドガーに内緒で会いに行くようになる。しかしリントンの死期は迫っており、まともに相手をすることはできなかった。キャサリン・リントンは目を覚まし始めるが「嵐が丘」へ行き、そこでヒースクリフに閉じ込められてしまう。リントンと結婚しなければここから出さないと脅され、エドガーの死に目に会いたかったキャサリン・リントンは、リントンへの同情心も手伝って承諾する。数日後、エドガーは亡くなり、しばらくしてリントンも亡くなった。ヒースクリフは遂に「スラッシュクロス」とエドガーの財産をも自分のものにしたのだった。

エレンの長い話に納得したロックウッド。しばらくここで過ごしていたが、あまりの退屈さに一年の契約期間を待たず都会へと帰って行った。そうして時間が過ぎ契約が切れるとき、たまたま「嵐が丘」の近くを通り過ぎ、契約終了の挨拶でもしようと思い立った。すると「嵐が丘」は前に来たときとまるで変わっていた。キャサリン・リントンはののしり合っていたヘアトンと仲良く勉強しており幸せそうにしている。エレンに問いただしたところヒースクリフは亡くなったのだという。キャサリンに対する愛と憎しみにより幻覚を見て発狂したと。この「嵐が丘」と「スラッシュクロス」は本来の持ち主であるヘアトンとキャサリン・リントンに戻り、二人は和解し愛し合いいずれ一緒になるだろう。ヒースクリフはキャサリンの墓の横で静かに眠っているのだろうか。それとも二人で亡霊になって今もまだ嵐が丘をさまよっているのだろうか。
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[2014/09/14 17:17] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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