スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 | page top
追うぞ! 千夜千冊110夜 『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ
この話の舞台は、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会である。そこでは本の所持が禁止されており、発見された場合はただちにファイアマンと呼ばれる機関が出動して焼却し、所有者は逮捕されることになっていた。表向きの理由は、本によって有害な情報が善良な市民にもたらされ、社会の秩序と安寧が損なわれることを防ぐためだとされていた。密告が奨励され市民が相互監視する社会が形成され、表面上は穏やかな社会が築かれていた。しかしその結果、人々は思考力と記憶力を失いわずか数年前のできごとさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民になっていた。そのファイアマンの一人であるガイ・モンターグは当初は模範的な隊員だったが、ある日クラリスという女性と知り合い、彼女との交友を通じてそれまでの自分の所業に疑問を感じ始めた。ガイは仕事の現場で拾った数々の本を読み始め、社会への疑問が高まっていく。そしてガイは追われる身となっていく。

そんな話である。題名は、本の素材である紙が燃え始める温度(華氏451度≒摂氏233度)を意味している。禁書とか発禁とかへの抵抗についてか。

松岡正剛さんは次のように述べている。
「この作品の魅力は、ブラッドベリが書物を焼く法令をもったジョージ・オーウェル型の窮屈な未来社会を一方で描きつつも、その一方で、ブラッドベリがどのように書物の神話を取り戻そうとしたかという一点にかかっている。書物を焼くのは秦の始皇帝の焚書のようなもので、社会があまりに究極の姿を求めるときにしばしばあらわれる悲喜劇的な現象である。別に未来社会ばかりにおこるわけではない。もちろんブラッドベリもそのつもりで書いている」

さよか。それで、何が面白いのだろうか。SF作家・レイ・ブラッドベリは、たしか昨年(2012年)亡くなっていると思う。レイ・ブラッドベリは、精神の自由と個人の尊厳を、その証拠としての活字文化を守り抜くべくものとしたと知ればよいのだと思う。

松岡正剛さんのブラッドベリ読書談を聴こう。
「ぼくはレイ・ブラッドベリの作品のほとんどを読んでいるが、最初に唸ったのは『火星年代記』であった。この本のことを教えてくれたのは写真家の奈良原一高で、たしか杉浦康平も「あれはいいねえ」と言っていたようにおもう。ついで『黒いカーニバル』と『十月はたそがれの国』に驚いた。この人に会いたいとおもったのはこのときである。ついで『ウは宇宙船のウ』『スは宇宙のス』を、フレドリック・ブラウンの『狂った宇宙』とともに読み耽った。そのときは工作舎に入ってきた戸沼恭にこれらを勧め、しばらくはブラッドベリとブラウンに似せてコピーを書く遊びに興じたものだった。この遊びは、ダイヤモンド社から頼まれて構成編集をした『東京市電・東京都電』という本のコピーに生かされている。が、とくにぼくがやられたと思ったのは、『何かが道をやってくる』である。これは冒頭からやられた。「嵐の空模様のシャツを着た男が避雷針を売りにきた」というものだ」

僕はたぶん他の作品は読むことはもうないと思う。

それより松岡正剛さんの昔の経験が面白い。これぞと思った人には会いに行く。そうすると新しい発見がある。これは見習わねばと思い最後に引用しておく。
「レイ・ブラッドベリと会って話しこんだ日本人はあまりいないらしい。そう、ブラッドベリ自身が言っていた。べつだん会うのが困難なめんどうな作家ではない。ロスアンジェルスの飛行場に着いたら電話をかければすむ。すぐに何日のアポイントメントがいいかを、本人が決めてくれる。そうすれば、かなり気さくで、陽気であって、なんでも話したがるアメリカ人に会えることになる。が、そのアメリカ人特有の明るさに、ぼくはちょっと面食らったほどだった。とくに地下室に案内されて、ミッキー・マウスをはじめとする厖大なぬいぐるみや人形のコレクションを自慢されたときは、これがあのブラッドベリなのかと疑った。しかし、ブラッドベリの真骨頂はそこにある。好きなもの、嫌いなものをはっきりさせること、そこなのである。本人も、こう言っている。「まず自分が好きなものは何かを決めること、ついでに何が憎らしいかを決めること、そうしたら次にそこに入りこむキャラクターを選んでみることだ」と。ただし、そこで自分ばかりが主人公になってはいけないらしい。そこからは、そのキャラクターの大活躍のために努力を惜しまないようにすることだという。地下室のキャラクター人形があんなに集まっているのは、レイ・ブラッドベリの世界を演じ分ける時間を待っている登場人物だったのである」
スポンサーサイト
[2013/11/05 14:07] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。