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追うぞ! 千夜千冊87夜 『日本の歴史をよみなおす 正・続』 網野善彦
今宵はとても楽しみで本著二冊をじっくり読み込んだ。思い起こせば「離」を受講していたときに、松岡正剛さんから網野善彦を読むようにと教わって、読んでみるとそこにはこれまで習ったことのない日本史が繰り広げられていたことに驚いた。

松岡正剛さんの言葉に耳を傾けてみよう。
「網野善彦の本はだいたい読んだほうがいい、というのがぼくのスタンスである。最近では岩波新書の『日本社会の歴史』全3冊がベストセラーになって、これまで中世の社会経済の構造や王権や宗教の構造に関心がなかった人々がしきりに読むようになった。ぼくもこの岩波新書については日本経済新聞で書評をして、その波及に一役買った。網野さんも、あの書評の直後から売れ出したようですね、とまんざらでもなさそうだ。が、ほんとうのところをいうと、あの本は流れをつかむのには、前半部は充実していてなかなかいいのだが、日本史全貌の充実をすべて期待するには、ちょっと濃密すぎて、網野本の通史としてはやや重たい。また多くの中世論もかたっぱしから読んでほしいのだが、それらはどの一冊がいいともいえない複合連鎖に満ちている。そういうわけで、網野善彦の何を勧めるかというと、いつもけっこう迷うのだが、この『日本の歴史をよみなおす』は、筑摩書房の編集部を相手に話したものをまとめたせいか、まことにわかりやすく、かつ示唆に富み、それでいて大きなツボが躍動するように話されている。出色のデキなのである」

『日本の歴史をよみなおす』は、
第一章 文字について
第二章 貨幣と商業・金融
第三章 畏怖と賤視
第四章 女性をめぐって
第五章 天皇と「日本」の国号
の構成となっている。「無縁」と云う考え方は、懐かしい話をもう一度味わえた気分だ。

松岡正剛さんの説明を聴いてみる。
「では、日本人はどのようにモノの経済を貨幣の経済に変えていったのか。本書は、そこのところの複雑な経過と変移をまことに明快に説明して、かつ適確な例を紹介しつつ、つきすすんでいく。そして贈与と互酬による社会のコンベンションが、貨幣によって駆逐されるのではなく、別のかたちに移行しながら、新たな職人世界というものを形成していったという経緯を解剖していく。注目するべきことは、中世の市場がモノとモノとの贈与互酬の関係を断ち切るための場所だったということである。それまでは、モノとモノの交換には必ず人間関係がつきまとっていた。それではいわゆる商品経済にはなりえない。そこで特別な機能をもつ市場があらわれる(市場は市庭ともいわれた)。そこはモノに付随する属人的な人間関係を断つところだったのである。網野善彦が有名にした「無縁」「楽」というしくみも、この経緯のなかから生まれてきたものだった。縁を断つところ、すなわち無縁である。その無縁をおこせるところ、あるいは別の関係に入れるところ、それが市場(市庭)の隠れた機能であった」

併せて賤視思想と職能民の話は何度読んでも感動する。

松岡正剛さんの要約です。
「日本には古代から、公民と平民、良民と賤民を分け、葬送などの仕事に従事するものをケガレの人々とみなす傾向があった。これは一種の賤視思想であるが、その賤視にもとづいた古代の賤民が事実上の奴隷に近い位置にあったのに対して、中世で非人とよばれた人々はむしろ職能民として独自のネットワークを形成するほどの一群だった。この職能ネットワークの民こそが網野さんの中世史観の主人公たちなのである。これらの職能民はときに非人とか清目とかとよばれ、特別な衣を着ながらも、ときに神社仏閣と結びつき、ときに天皇・皇族からの許可をもって、関渡津泊(かんとしんぱく)〔街道や港〕を自由に往来した。そうした社会の最上層の一部とまるでワープをするかのように連動している職能者たちを、その所属に応じて「神人」「寄人」「供御人」などという。そのような職能者たちはほかにもいた。鋳物師・木地師・河原者・牛飼・馬借・各種の物売りたちである。かれらは各地を動きまわるネットワーカーで、しかもそこには女性もたくさんまじっていた」

『続・日本の歴史をよみなおす』は、
第一章 日本の社会は農業社会か
第二章 海からみた日本列島
第三章 荘園・公領の世界
第四章 悪党・海賊と商人・金融業者
第五章 日本の社会を考えなおす
の構成となっている。「百姓は農民か」の問題提起は目から鱗が落ちたことを今でも忘れはしない。

松岡正剛さんはこのように結んでいる。
「本書は、日本を正確に知ることが「日本人の新たな義務だ」という信念をもつ著者が、これまでくりかえし述べてきたことを、語り部の達人となって子供にも理解できるように伝えようとした2冊。ぜひ、父と子で、また姉と弟で読みあわされることを勧めたい。独りで読むのはもったいない」

私もまったく同感です。
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[2013/06/10 04:58] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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