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追うぞ! 千夜千冊94夜 『愛猿記』 子母沢寛
今宵はともあれこの『愛猿記』というものを読まないことには始まらないと観念し読んだ。文庫本で60頁39文節から成るエッセイである(読んだのはこの章だけ)。

読んだが、だ。著者が猛猿を飼いすったもんだあった話ではないか。で、それが何やねん?

松岡正剛さんの出だしはこんな風だ。
「昭和43年(1968)、子母沢寛は心筋梗塞で急逝した。翌日はお手伝いさんと封切りしたばかりの『猿の惑星』を見にいくつもりだったという。それをとてもたのしみにしていたらしい。それほどこの作家は猿好きだった。猿だけではない、かなりの動物好きである」

さよか。子母澤寛と云えば勝海舟と思いつく。たしかNHK大河ドラマにもなったように思う。その原作者、私が子母澤寛について知っていることはそれだけ。私が生まれた頃からしばらくしてこの世を去っている人だからそれ以上のことを知る由もない。その子母澤寛が猿好きだったという話か-。

さすが松岡正剛さんは全章を読んでいるみたいで最初の猿との関係分だけ耳を傾けてみよう。
「本書は、連作である。最初に子母沢寛の友人が箱詰めの一匹の猿を運んでくるところから始まる。大暴れして近所にも迷惑をかけているいわくつきの猛猿だが、動物好きの子母沢さんならひきとるだろうというので、運びこまれた。「三ちゃん」という。ここからご主人の日夜にわたる格闘が開始する。奥さんは大迷惑なのだが、ご主人は三ちゃんがふにゃりと自分につかまった最初の感触がたまらない。なんとか妻子からの攻撃に抗するため、三ちゃんを弁解する立場にまわってしまったのがいけなかった。まるで猿の気持ちがみんなわかるんだという態度で、家中にも近所にも、猿にもふるまわなければならなくなっていく。ところが親の心、子知らずで、三ちゃんは主人の原稿用紙をむちゃくちゃに引きちぎる、うんこをそこらじゅうにする、風呂に入ってくるので顔をくしゃくしゃにして喜んでいると、風呂中におしっこをする。どうやら猿には“猿寝入り”というものがあるらしく、おとなしく一緒に蒲団で寝ていても、人間のほうが寝息をたてたとたんにむっくり起き上がり、日頃してみたかったことのすべてをやりとげるらしい。戸板をたたく、本棚をひっかきまわす、電気のコードをめちやめちゃにする、ご主人の洋服をめためたにする。ついに猿回しから伝授されたとおりに、ご主人は意を決して三ちゃんの首ねっこにがぶりと噛みつくことにした。2分、3分、「5分は噛みつきなさい」と言われたので、ご主人は必死に噛みつづける。大作家が猿の首を噛みつづけて離さないという図は、これは想像するだにおそろしい。杉浦さんも、きっとこのあたりで感極まったのだろうと見当がついた。これで、さすがに猿もちょっとは観念したらしく、このあと二人にしかわからない主従関係がほんのりと確立するようになった」

であるから本著は飼育記だ。子母沢寛って流行の文芸作家じゃなかったの? 猿だけじゃなく犬やカラスも可愛がったらしい。

動物って最後は人より早く死ぬ(人が先ならそれ以後観察できないし)。この別れのシーンは飼育記の読みどころだと感じた。子母沢寛はそのあたりがすごく上手い。
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[2013/06/29 19:43] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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