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追うぞ! 千夜千冊75夜 『茶の本』 岡倉覚三
松岡正剛さんが自信を持って『茶の本』の真髄を汲み取ったと云う十箇条の要約がある。まずそれを読んでみよう。
「01.西洋人は、日本が平和のおだやかな技芸に耽っていたとき、日本を野蛮国とみなしていたものである。だが、日本が満州の戦場で大殺戮を犯しはじめて以来、文明国とよんでいる。
02.いつになったら西洋は東洋を理解するのか。西洋の特徴はいかに理性的に「自慢」するかであり、日本の特徴は「内省」によるものである。
03.茶は衛生学であって経済学である。茶はもともと「生の術」であって、「変装した道教」である。
04.われわれは生活の中の美を破壊することですべてを破壊する。誰か大魔術師が社会の幹から堂々とした琴をつくる必要がある。
05.花は星の涙滴である。つまり花は得心であって、世界観なのである。
06.宗教においては未来はわれわれのうしろにあり、芸術においては現在が永遠になる。
07.出会った瞬間にすべてが決まる。そして自己が超越される。それ以外はない。
08.数寄屋は好き家である。そこにはパセイジ(パッサージュ=通過)だけがある。
09.茶の湯は即興劇である。そこには無始と無終ばかりが流れている。
10.われわれは「不完全」に対する真摯な瞑想をつづけているものたちなのである。 」

上の要約はあまりよく分からない。『茶の本』全7章にも目を通してみたが、一文一文が濃厚と感じられるも意味がよく取れない。

松岡正剛さんが次のように云っているではないか。
「そもそも『茶の本』は虫の翅のように薄い一冊である。原文は英文でもっと短い。ここにとりあげた村岡博訳の岩波文庫で、本文は60ページに満たない。しかしながらここに含蓄された判断と洞察はいまなお茶道論者が百人かかってもかなわないものがある。そこで推理すべきは、なぜ天心がこれほどの判断と洞察ができたかということである。それをどんな覚悟をもって端的に濃縮しきれたのかということである。けれども、それを推理するのはたいそう難しい」

松岡正剛さんは茨城県天心記念五浦美術館にも訪れている(ここが美術館になる前の大昔のことだそうだが)。そこのHPに紹介されている岡倉天心の沿革は次の通り。五浦は「いずら」と読むそうだ。
「岡倉天心(1863-1913)は、急激な西洋化の荒波が押し寄せた明治という時代の中で、日本の伝統美術の優れた価値を認め、美術行政家、美術運動家として近代日本美術の発展に大きな功績を残しました。その活動には、日本画改革運動や古美術品の保存、東京美術学校の創立、ボストン美術館中国・日本美術部長就任など、目を見張るものがあります。また、天心は自筆の英文著作『The Book of Tea(茶の本)』などを通して、東洋や日本の美術・文化を欧米に積極的に紹介するなど、国際的な視野に立って活動しました。また、天心は晩年、思索と静養の場として太平洋に臨む人里離れた茨城県五浦(現在の北茨城市五浦)に居を構える一方、横山大観ら五浦の作家達を指導し新しい日本画の創造をめざしました。以後、天心は亡くなるまでこの五浦を本拠地として生活することになります」

今宵の松岡正剛さんの岡倉天心の語りは気合いが入っているしやけな長い。その内容は脇に置くとして、岡倉天心には「境涯」という言葉が相応しいと書いてある。「境涯」とは人がこの世に生きてゆく上での立場のことを云う。

晩年、日本美術院を創立したときのことを知る程度で十分だと思った。茨城県天心記念五浦美術館のHPから再び抜粋する。
「急進的な日本画改革を進めようとする天心の姿勢は、伝統絵画に固執する人々から激しい反発を受けることになります。特に学校内部の確執に端を発した、いわゆる東京美術学校騒動により、明治31年(1898年)校長の職を退いた天心は、その半年後彼に付き従った橋本雅邦(がほう)をはじめとする26名の同志とともに日本美術院を創設しました。その院舎はアメリカ人ビゲローなどから資金援助を得て、東京上野谷中初音(やなかはつね)町に建設され、美術の研究、制作、展覧会などを行う研究機関として活動を始めました。横山大観、下村観山、菱田春草らの美術院の青年作家たちは、天心の理想を受け継ぎ、広く世界に目を向けながら、それまでの日本の伝統絵画に西洋画の長所を取り入れた新しい日本画の創造を目指したのです。その創立展には、大観「屈原(くつげん)」、観山「闍維(じゃい)」、春草「武蔵野(むさしの)」などの話題作が出品されました」

松岡正剛流の岡倉天心の総括は次のようなものである。
「それを天心の言葉で端的にあらわすなら、「故意に何かを仕立てずにおいて、想像のはたらきでこれを完成させる」ということになろう。想像力が負の花を咲かせるのである。ほんとうは、ここから先こそぼくが書かなければならない天心なのだが……」

おぼろげながら岡倉天心の輪郭が見えた気がする。
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[2013/04/12 06:39] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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