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追うぞ! 千夜千冊58夜 『絵のない絵本』 ハンス・C・アンデルセン
“追うぞ! 千夜千冊”をやっていると、当然だか多岐にわたる本に出逢う。意味不明の書があったかと思えば、今宵のように有名な童話もある。そういう意味では起伏に富んでいて興味深いとも思える。私には死ぬまでやれる趣味だし。

アンデルセンと聞けば、19世紀に活躍したデンマークの代表的な童話作家と思い浮かべるだろう。そして作品としては『裸の王様』『みにくいアヒルの子』『人魚姫』『親指姫』『マッチ売りの少女』あたりが代表作だと知っている。

今宵の『絵のない絵本』を読むのは初めてだった。この物語は、一人の貧しい青年が窓辺から見える月に語りかけられることで始まる。月は青年に、これから自分が話す物語を絵にしてみなさいと勧める。そこで青年は小さな話を書きつけて、それが第一夜から第三三夜まで続くという構成になっている。

ハンス・クリスチャン・アンデルセンは1805年デンマークのフュン島の都市であるオーデンセに産まれている。14歳の頃、ヨーロッパでも有数の10万都市であったコペンハーゲンに出てきた。田舎の貧乏青年にはコペンハーゲンは目をみはる花の都であったろう。

ハンス・クリスチャン・アンデルセンは、首都コペンハーゲンに出て役者や歌手になろうと決意したようだ。だから王立劇場の芝居まわりの仕事を志願し劇詩人としてのスタートを切ろうとした。しかし劇作家としては失敗つづきに終わった。その辺りの事情を知りたければハンス・クリスチャン・アンデルセンの自伝か評伝を読むしかないだろう。

ハンス・クリスチャン・アンデルセンは、よく度に旅に出たそうだ。旅でイタリアを訪れたときの印象が『即興詩人』として結実してもいる。やがて童話作家に転身してしまう。

編集の本質を説く松岡正剛さんはハンス・クリスチャン・アンデルセンを次のように評している。
「アンデルセンが童話で示している能力のなかで、ぼくが注目したいのは図抜けた編集能力である。この編集能力は水晶や雲母でできている。とくに複雑な編集ではない。しかし、肝腎なところで主客をいれかえる手法とか、ちょっとした痛みを挿入するところのぐあいには、実に適確な編集をかけてくる」

松岡正剛さんは、その例を挙げ、
「たとえば『皇帝の新しい衣装』というバロックふうの昔話では、王様が裸であることを告発するのは王様の馬丁の黒人になっているのだが、アンデルセンはこれを子供の一声にしてしまった。原作では主従関係がうたわれるにすぎないものが、子供の一声によって王様と子供の主客がいれかわる。こういうところがうまかった。『雪の女王』では少年の目の中にガラスが刺さる痛みがうまい。この痛みがあるために全編がぐっと生きてくる。『赤い靴』もそうで、あの靴がとれなくなるところが靴の赤さにつながっていく」と説明している。

私には、何がそんなに長けているのか分からない。あまりハンス・クリスチャン・アンデルセンの編集力なんてものに関心が向かない。今宵の学びとしては『絵のない絵本』とある通り、文字通り、絵はないものの、とても情景的な描写で頭の中で絵本が出来上がるようにハンス・クリスチャン・アンデルセンは物語を書いたのだということなのだろう。
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[2011/10/27 15:43] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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