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追うぞ! 千夜千冊 32夜 『蒼ざめた馬』 ロープシン

おそらく知っている人には有名な書なのだと思います。しかしながら私としては、「追うぞ! 千夜千冊」でなければ、生涯手に取らないだろう本です。ロシアの革命家でテロリストですと。どうしてそういうのに興味が湧きましょうか。

本名はボリス・サヴィンコフといいロープシンはペンネームのようです。松岡正剛さんが冒頭で紹介して下さっています。「ヨハネ黙示録第六章第八節に、「・・・視よ、蒼ざめたる馬あり、これに乗る者の名を死といい、陰府(よみ)、これに随う。」とある。ロープシンの物語の標題はここから採られている」。ここまで知り暗い気持ちです。死が蒼ざめたる馬に乗っているのですと。陰府とは黄泉であり死者の世界の意味でしょう。

松岡正剛さんの要約で『蒼ざめた馬』が執筆された状況を知ることができます。ボリス・サヴィンコフは、「学生時代にペテルブルグで革命運動にふれ、1903年にはエスエル(社会革命党)に入党する。さっそく頭角をあらわして秘密戦闘部員となると、すぐさま内相プレーヴェや皇族セルゲイ大公の暗殺をたくみに先行指導した。その後、1906年に逮捕されて死刑を宣告されるのだが、処刑直前に劇的な脱走を企て、『蒼ざめた馬』や『無かったもの』などを執筆する。が、それは余技、ふたたび革命運動に戻っていく」。

調べてみますと、ボリス・サヴィンコフは当初マルクス主義に傾注したのですが、それが社会革命党の立場に転向したそうです。このエスエル(社会革命党)とは1901年に結成されたテロ活動を担う組織だとか。

ロシア革命の時代背景を知っておく必要があります。封建的な社会体制に対する不満が積もるなか、19世紀末以降の産業革命により工業労働者が増加し社会主義勢力の影響が浸透していたのです。これに対し、ロマノフ朝の絶対専制(ツァーリズム)を維持する政府は社会の変化に対し有効な対策を講じることができないでいたのです。

端的にいうと、ボリス・サヴィンコフは、その時期において、反政府活動のテロリストだったのです。しかし革命運動の正史には出てこない闇の世界の住人でした。

松岡正剛さんの説明によると、「やむなくパリに亡命して、ひそかに『漆黒の馬』などを書きつつ、十月革命後は今度は反ソ活動に転じて、ヤロスラヴリの反乱などを工作する。が、これらも、ことごとく失敗する。こうして1920年、ついに決してポーランドで白衛軍を結成、4年後に暗殺団をつくってソ連への潜入を計画するのだが、これまた国境であえなく逮捕され、そのまま投獄されてしまう。しかし、もはやそのような自身の境涯に納得がいかず、獄中でひらりと身を躍らせて投身自殺した」そうです。

『蒼ざめた馬』というのは、テロリストの回想だと思えば良いでしょう。ニヒリズムのようなテイストでとても一字一句読む気にもなれません。しかしながら時代が変わっても、このような本が紹介されていることに読書の厚みを感じました。

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[2010/05/02 14:51] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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