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追うぞ! 千夜千冊 28夜 『虚空遍歴』 山本周五郎

山本周五郎を知らない私にとっては、大学時代から山本周五郎遍歴を持つという松岡正剛さんの本家千夜千冊の今宵はまるでピンとこない感じです(私の問題ですが)。

『樅ノ木は残った』『虚空遍歴』『ながい坂』がなんでも山本周五郎文学を代表する本格的長編小説のようで、今宵のお題図書はその一つだと知り、随分気が重くなりました。文庫本にして上・下にわかれ、文字は小さく、時代小説なのですが、きちんと読まないと深く味わえなさそうです。

そうこうしているときに幸運にも、テレビドラマで『樅ノ木は残った』が放映されていました。原田甲斐役が田村正和というのはどうなのかという懸念が残りながらも、なるほど、時代小説にもこういう世界観の見せ方があるのかという学びがありました。

映像を観るのがてっとり早いです。イメージしていないと文字だけだと頭にスーっと入ってきません。原田甲斐が最後に斬り殺されるシーンは田村正和の過剰演技で大いに白けたのですが、伊達騒動を題材にした時代劇の山本周五郎節とはこういうものかと楽しめました。

司馬遼太郎と比較するとエンターテイメントはなく楽観的ではなく悲哀的な感じです。ただし池波正太郎のような庶民的な人情ものでもなく、藤沢周平とはよく似ていてそうででも何かが違うという感じもします。ということで山本周五郎は独自のポジショニングにあるなと知りました。

この『虚空遍歴』(「こくうへんれき」と読みます)なのですが、松岡正剛さんから摘み引用させていただくと、「江戸で端唄の名人と評判がたった若き中藤冲也が、そういう評判に包まれて浮名がたつほどだったにもかかわらず、それに満足できずに自分を嫌悪し、あえて本格的な浄瑠璃をつくろうとして苦悶する遍歴が克明に描かれている物語である」

「冲也はあてどもない浄瑠璃遍歴に旅立っていく。物語は江戸から東海道を上り、京都へ、近江へ、さらに金沢へと変転する。その変転に冲也に惚れるおけいがかかわって、独白の挿入が入ってくる。長い独り言である。おけいはもともとは色街育ちなのであるが、冲也の芸を聞き、毛虫が蝶になったような身震いをうけた女である。そのおけいが筋書の進展とは別に、淡々と胸の内をあかしていく。そうなると、そのおけいの独白が次にどうなるか、読者は居ても立ってもいられぬ気持ちになってくる」と書いてあります。

正直に言うと私は読み込んでいないので、読者として「居ても立ってもいられぬ気持ちになって」からどうなるのかは知りません。

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[2010/01/09 00:10] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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