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物語2

2.ストレンジャー

数日後、血球運搬船エリスロサイト号に老廃物の搬入要請が入った。今は肺静脈航行の帰途だから各基地で老廃物を積み込むが、細胞S-2793基地にはこれまで寄航したことがない。ロンバートに確認させたが至急の搬入要請だと言う。「エリスロサイトは貴基地とは取引がないと応答しましょうか?」通信担当のボリーに尋ねられへグリーは戸惑った。

「細胞S-2793基地から申請された老廃物スペックを解析して」ヘグリーは解析担当のアンに指示した。暫らくしてアンから回答があった。エリスロサイト号のデータベースには見当たらないということだ。長年の蓄積でデータベースは充実している。そこでも検定できない老廃物とは何だろうか。搬入は危険だとヘグリーは直感した。

白血球のセキガ船長と血小板のバクテリオを除くと我々5名は赤血球である。血球運搬船の船長には通常赤血球が就くが白血球出身は稀だ。ヘグリーが見るところセキガは船のマネジメントに疎かになっている。へグリーは職責上仕方なくセキガに判断を仰いだ。搬入申請書を見たバクテリオは、これは肺胞管で除去された新種の細菌だと知りセキガに搬入を進言した。

「ちょっと待って下さい。データベースで検定されておらず搬入するのは危険です」へグリーはセキガとバクテリオに抗議した。しかしセキガの判断は成分分析なしに直ちに搬入せよというものだった。夕刻エリスロサイト号は細胞S-2793基地に寄航し、奇妙にも老廃物セルを一つだけ搬入した。

深夜、アンの部屋でロンバートの悲鳴があがった。「大変だ、アンが殺されている!」直ちに駆けつけるとヘグリーは声を失った。アンは無残にも全身を食い千切られていた。バクテリオからも知らせがあった。夕刻に搬入した老廃物セルが溶けて開いており中に何もいないと言う。やがて船内のあちららこちらにアンの身体の細胞だと思われる破片が散乱しているのが見つかった。エリスロサイト号に戦慄が走った。
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[2009/12/24 00:10] | 編集技術 | コメント(0) | page top
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