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千夜千冊 16夜 『戦略の断層』 古我知史 『フロンティア突破の経営力』 小川政信

ビジネスで戦略は流行です。誰もが戦略を述べます。私は、戦略とは人の戦略観(ですから、どこまで行っても主観)であると信じていますが、どうも“神棚に祭る客観的な戦略なるもの”があるかのように話す方もいて呆れることがあります。

戦略観であるから、戦略の本体は意志であり戦略を考えるすべての理論やフレームワークは道具です。意志が希薄なのに(当事者意識がないのに)理論やフレームワークを振り回す人種をコンサルタントと言います。だからコンサルタントに戦略を語らせると碌な事はありません。さらに戦略立案を丸ごと頼むなんて愚の骨頂です。私はそのように考えています。

今宵は、凡そ同年代で、かつてマッキンゼー・アンド・カンパニーで活躍した2人が最近著した戦略本を読み比べてみたいと思います。結論から述べると、古我(敬称略、以下他も同じ)が小川より優れています。評価視点は戦略実践ガイドたるかです。

私事ですが、一方の著者とは知り合いで、もう一方とは会ったことはありますが親しくはなく人となりを知らない関係です。そのため評価に恣意性が働いているかもしれません。また小川も悪書(読む価値すらない本)でなく、私には戦略実践ガイドとして益がないと判断したのみであること、本人に何ら批判があるものではないことを予め述べておきます。

古我の優位は2点あります。1つは、企業を生命と観て成長を前提に途上で遭遇する苦難(古我はそれを非連続点として断層と呼ぶ)を知恵を活かし克服するが大事とすることです。2つは、戦略観を持つに必要な凡そすべてのフレームワークを紹介していることです。学者ではないから戦略論への言及はありません。古我は当初よりそれを意識していないでしょう。その姿勢が良いのです。

小川の章立ては系統だっていない。弱点は2点あります。1つは、日本語を常識で使えよと言いたくなることです。多用されている「戦略空間の多次元性」という言葉はその持つ意味を(他者が受けとめることを慮るという視点で)意識していません。小川の独りよがりの自惚れが鼻につきます。戦略を考える観点は多くあると言えば良いのです。この類が本著に満ちています。読む気が失せる一因でしょう。

2つは、「フロンティアの次元」なるものをどのように浮かび上がらせるかの方法論が主な説明となっていません。ビール分析とネミック・ラムダは除くとしても、企業名が仮称されていて特定シーンに限定されています。小川がこのように指導したとか、そのようなことはどうでもいいです。道具の解説なくして何が戦略実践ガイドでしょうか。

古我を批判するとしたら2点あります。1つは、備・突・構・攻・守・破・離とする7つのライフサイクルを提示しているが、粗いです。芋虫と蝶、ヤゴとトンボのように、企業が7回も完全変態するんかい。読者が、これにより自社や事業がどの位置なのか判断できません。2つは、この型を重んじるあまり事例やフレームワークがなぜそのライフサイクルの段階で有益かつ必用なのかの合理的理由がありません。この7つのライフサイクルの実務的意義は薄いでしょう。本著全体を戦略実践ガイドとして使うと良いと思います。

小川を評価するとした2点あります。1つは、それは当然のことなのですが、「現場・現実を本当に虚心坦懐に観察し、メカニズムを解明し、鍵を抽出し、その鍵を、経営視点で、広大な次元を総動員しながらやっと作戦計画に高めていけるかどうか、というものだ」(小川より引用、この人の日本語は本当にしまりがない)と強調しているところです。2つは、大企業の戦略不全に陥っている経営陣に大いに刺激を与えることにあるでしょう(だがなぜ戦略不全に陥っているかの原因究明は小川には無理でしょう)。

最後に、古我さん、小川さんと述べさせていただき、未熟な私が偉そうに読了後の感想を私の千夜千冊させていただいたことを深く感謝いたします。

2人の言葉を心でいただきます。

力への意志と自由なる精神 (古我)

渾身の努力とともに新しい未来を創造していった物語に触れると、体の中で共鳴し感動するものを覚える (小川)
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[2009/12/01 00:10] | 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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