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追うぞ! 千夜千冊 20夜 『晶子曼陀羅』 佐藤春夫

今宵の『晶子曼陀羅』はアマゾンで取り寄せできないと知りました。入手できないのは10夜『内なる神』以来のことです。それで松丸本舗で捜したところ、この文庫本がプラスチックシートに覆われていて549円だったか値札がついていたので、あった! と勇んでレジに差し出したのです。ところが請求額は5,495円だったか10倍も高い。どうしてかと確認したところ、値札の最後の数字が薄くて見えなかったのです。えっ! となってやはり買うのをやめておきますと言いました。

困っていた頃、ヤフーオークションでこの本が出品されていました。誰も入札していなかったので1,000円で落札でき、すぐに送ってもらいました。古本の買い方も多様になってきました。私の入手した『晶子曼陀羅』は昭和37年発行の角川文庫のものです。

著者の佐藤春夫は、これは与謝野晶子伝でもなく、与謝野晶子論でもないと書いています。これは与謝野晶子を想定した小説です。しかも与謝野晶子の生涯のうち初期の頃を扱っています。松岡正剛さんの表現だと、「少女晶子が浪漫にめざめて古典をむさぼり、歌を詠み、鉄幹と出会って恋に落ち、みずから時代を奔って「女」になるまでを扱っている」。「だから、その後の晶子が平塚雷鳥に『青鞜』の序詞を頼まれ、その後は雷鳥からも伊藤野枝からも批判されて怯まず闘いつづけたとか、11人もの子供をどのように育てたとか、さらには西村二朗の文化学院の創立にどのようにかかわったとか、そういう事情にはいっさいふれられていない」。

歌境を深めるという表現がありますが、百年に一度の逸材である与謝野晶子が、与謝野鉄幹と出遭うことにより恋愛の深みに落ちたいへん複雑な情感の経験を重ね、歌集と子供を競うように世に送りだしたのでしょう。与謝野晶子の写真が残っていて観ることができますが、まなざしは強く、なんだこの太い眉は。唇はぎゅっと結ばれ、顎がかっしりしているから、とても意志が強そうです。

松岡正剛さんの説明で3つ学んだことがあります。1つは、山川登美子という人の存在。与謝野晶子とともに、与謝野鉄幹を愛した女性です。

2つは、永畑道子という人の『華の乱』『夢のかけ橋』という書があり、新たな晶子像を創り出しているそうです。私は知りませんでしたが、深作欣二の演出、吉永小百合と松田優作の主演で映画化されているそうです。興味を持ちました。観たいです。

3つは、与謝野晶子は源氏物語を訳しており、それがたいそう秀逸だと書いてあります。引用すると、「ぼくとしては、日本で最初に『源氏物語』の現代語訳にとりくんで、かつその後のどんな現代語訳をも凌駕している『与謝野晶子訳・源氏物語』を読んでもらいたいというのが、本音なのである。晶子の源氏にくらべれば、円地源氏も瀬戸内源氏もお話にならない」。

なるほど。松岡正剛さんの解説があることは役立つ。また今宵は小説で良かった。『みだれ髪』も読んでみましたが、冒頭から意味不明で歌をどのように解釈するのか私には力らがないと悟りました。

夜の帳(ちょう)にささめき尽きし星の今を下界の人の髪(びん)のほつれよ

男と女が恋の絶頂にいるのでしょうか。
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[2009/11/28 00:10] | 追うぞ! 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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