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千夜千冊 6夜 『ぼくは猟師になった』 千松信也

稀有な本です。著者はいま35歳ぐらいでしょうか。20代から猟師になりました。関西でワナ猟をやっています。その日常の一部始終が書かれています。類書はまずないでしょう。

日本では狩猟するのには免許が要ります。毎夏の試験では、網・ワナの甲種、散弾銃・ライフル銃の乙種、空気銃の丙種と分かれているそうです。著者は、ワナ猟ですから甲種の免許を持っています。

最初の獲物はシカだったそうです。ワナ(ククリワナと呼ばれている)でシカを引っ掛けるとして、止めを刺すのは、読んでいて少し笑ってしまいましたが、棒で渾身の力を込めてシカの後頭部をどつくのだそうです。そう、どついて気絶させる。イノシシでも一緒。

この状態だと脳しんとうを起しているだけで心臓はまだ動いているので、①ナイフで頚動脈を切断し、後ろ脚を持ち上げて逆さにして血抜きする。②その場で腹を割き、内臓を取り出す。③鮮度を保つためにすぐ冷やす。④そして肉の解体。こういう手順となります。

問題はイノシシが中々獲れないこと。一匹のイノシシは50~70キロほどある場合があり、まさに猪突猛進してくるので厄介なのだとか。いかにワナの存在を気づかせず普段通りけもの道を歩かせるかが大切なようですが、用心深いイノシシは、匂いなどからそれを未然に察するのだそうです。そういうイノシシとの駆け引きがよく描かれています。

むかし私は青森県の白神山地でマタギが熊を獲って解体する映像を見たことがあります。特殊な人たちだと思っていました。千松君の本著を読んで、平成のこの時代に、近くの運送業で働きながら狩猟を生活として暮らしていることに触れて、農業者や漁業者と同様に狩猟者の実態を学ばせていただきました。有意義でした。本著を書いてくれてありがとう。

イノシシの肉はシカよりも高く売れるそうです。牡丹鍋とか食べ方が豊富です。シカが増えている背景には様々な理由があるそうですが、シカ肉を誰も消費してくれないことが大きな問題だとか。フランス料理店は、ジビエ料理を出すにも海外からシカ肉を輸入しているらしい。国内にこんなに新鮮なシカ肉があるのに。そういう状況があり、猟師がシカを獲ろうとするインセンティブが働かない。

獲物に対しての敬意や感謝もきちんと考えられているし良書だと思いました。
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[2009/06/18 00:10] | 千夜千冊 | コメント(0) | page top
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